『ねずみ女房』
 
『ねずみ女房』
福音館書店 1,260円
ルーマー・ゴッデン 作
W・P・デュボア 画
石井桃子 訳
  ねずみ女房は、ときどきぼんやりと窓の外を眺めている。家ねずみというものは、いつも家の中のことだけ、今日のチーズのこと、子どもたちや夫のことを考えていればよいのだった。
  ところが、ある日、家にやってきたカゴの中のハトのことが気になりはじめる。捕らわれのハトのえさの豆をいただくために、ハトのカゴに入ったねずみ女房は、何も食べないハトが少しずつ心配になって、話しかけるのである。
  夫に嫉妬されながらも、ねずみ女房は、外の世界のすばらしさ、飛ぶということの感動を少しずつ理解していくのだった。
  後半の数ページは、大人である読者には、たまらない言葉の連続である。
  ねずみ女房が流す、あわつぶほどの小さな涙のことは、子どもにはわからないかも知れない。なのに、この一冊は、子どもの本としてながく読み継がれている。
  そう、子どもの本には、ながく生きた大人の想いがたっぷりつまっているのだ。