さんさん【1面】
お正月になると家々を訪れ、面白い節回しで祝詞を述べて歌い舞うのが萬歳。三重県にもその歴史を引き継いでいる「伊勢萬歳」が鈴鹿市に残っています。太夫・才蔵が繰り広げるおめでたい芸に触れ、この不景気をいっしょに吹き飛ばしましょう!
萬歳はお正月に家々を訪問して、五穀豊穣・無病息災・長寿繁栄などを祈願して、舞や歌を納める祝福芸です。風折烏帽子に素袍をまとい、手に扇を持った主役の「太夫」と大頭巾に裁ちつけ袴の脇役「才蔵」が門口で、鼓・太鼓などの楽器を演奏しながら、掛け合いで芸を演じます。 萬歳は大和(今の奈良県)が発祥といわれており、平安時代の文献にはすでにその名が見られる古い歴史を持つものです。この大和萬歳が全国に広がって地方萬歳が成立していきました。三河萬歳などが有名です。萬歳は昭和初期までに全国に多くの流派が生まれ、萬歳→万歳→漫才と文字も芸も時代とともに変化していきました。現在の「漫才」のルーツが、この門付萬歳なのです。 その潮流の中、江戸時代初期頃に尾張地方から伝わった門付萬歳が、鈴鹿市三宅町一帯で「伊勢萬歳」として成立したといわれています。
伊勢萬歳は1月から田植えの始まる5月までの農閑期に、農家の副業として発展。三重、和歌山、奈良などの近畿一円の町や村を「笑顔一行」という名で巡業をしました。門付萬歳がないと福が来ないという家々からの催促もあり、昭和45年頃まで続いたといいます。 現在、伊勢萬歳を守り続けているのが太夫の村田清光さん(68歳)と才蔵の中川晃さん(65歳)。コンビを組んで50年以上。「あうんの呼吸」で見事な掛け合い芸を披露しています。村田さんは伊勢萬歳・村田社中の代表者。父親が萬歳師だったこともあり、自然とこの道へ進み、14歳で萬歳師に。 「伊勢萬歳の特徴は胡弓、三味線、鼓の3つの楽器を使うところ。これを三曲萬歳といいまして、ずいぶんと賑やかになります。旅役者、琵琶引き、バイオリン引き、法界屋、本売りなど、昔はぎょうさん旅芸人がいましてなぁ。それが合流して、一座を仕立てて興行を打ったりしましたわ」と村田さん。
家に呼ばれて芸をする時間は、なんと1時間〜1時間30分。その間、おめでたい言葉や縁起のいい語呂合わせを連発して笑わせ、楽器も演奏します。「体力がいりますわ、ほんま。旅先で倒れる者もいました」と村田さん。 現在は、旅芸人姿は見かけなくなったがイベントやコンサートといった新しい形での祝福芸が、今の人に新鮮なものとして注目されています。津軽三味線とのジョイントコンサート、学校での公演会、各市町村のお祭りなど、県内や大阪を中心に依頼があるとのこと。 また、村田さんが数年前に制作した三重県民謡のCDは、伊勢音頭、三曲萬歳など7曲を収めた、萬歳を知る上でも貴重な作品。音頭の作曲依頼もある村田さん、自宅にレコーディングルームを作り、創作活動にも精力的。「時代に合わせ言葉を変えていくこと。古い言い回しや節だけでは、萬歳はみんなに受けませんなぁ、わっはっはっ」。祝い芸のプロの豪快な笑いが印象的です。
毎年1月松の内には、伊勢市内宮前の「おかげ横丁」に伊勢萬歳のお二人が、とびっきりのえびす顔と縁起物の一節でみなさんのご機嫌を伺います。今年は1月4日土曜日。午前11時と午後2時の2回、横丁内のやぐらで実演します。その後は各店をまわる予定です。
【取材協力・問い合わせ】 「伊勢萬歳・村田社中」 代表:村田清光 鈴鹿市三宅町757 @0593(72)0764
有限会社伊勢福「おかげ横丁」 伊勢市宇治中之切町52 @0596(23)8838〈総合案内所〉