| 第13歩 「試す」を楽しむ。
かくいう私も、彼らの旅行中の通りすがりだ。その時私は京都の中華料理店にいた。チンジャオロースーの味がやけに薄いので、醤油をかけたり塩を足したりと、料理を台無しにしながらひとり黙々とランチを食べていた。店は狭く隣のテーブルがとても近い。そこにウェンディーさんご夫妻が案内され、私と同じランチをオーダー。だが隣のテーブルには調味料セットがない。(味が薄くてまずいのよ!)と思い彼らに醤油を渡そうと試みたところ、笑顔で「いらない」と断られた。薄味好みらしい。ともかくそれが会話の糸口だった。日本の中華を試したかったという彼女に「いえ、このチンジャオロースーは……」と言いたかったが、味の微妙な部分の英語が分からず、断念。他にも意思疎通のかなわぬ所もありながら、初対面ともいえないうち解け方で昼食が一気に楽しいものとなった。京都での予定を尋ねると「ハローキティを探す」ことだという。ユニークだ。なのに「一体ハローキティというのは何者?」と聞く。何者かもわからず探すのも大変だろうから「スヌーピーみたいなもの」と、いい加減なヒントをあげた。別れ際、彼女はオーストラリアの美しい絵葉書と彼女の名刺をくれた。 以来、ウェンディーさんからメールが来るようになった。そこには、日本での発見などが綴られている。学校の先生だという彼女、日本に来る前は「仕事で90人もの人と取り組むプロジェクトがあって気が重かった」のだが、帰国後「銀座であれだけの人を見たら、90人なんてたいした数じゃないと思えてきた」のだそうだ。また、オーストラリアでは見たことがない「福袋」の中身とその販売方法にも感激していた。 未知のものに出会ったとき、避けて通るか向き合うか。周囲を見回すと「向き合って試す」派のほうが総じて楽しそうだ。ウェンディーさんたちは日本の中華だったが、本場でそれを試してみたという話を記者のI氏から聞いた。「ボクの父は中国語が出来ないのに、中国に行ったとき料理を自力で注文したらしいです」という。異国で起きる冒険心。「でも運ばれてきた皿に乗っていたのは、小さいタコっぽいものが50匹」。……なるほど、時には失敗もつきものだということか。だがそれもまた「試す」楽しみかな、と思う。少なくとも「未知のタコ」が試せる。 |