| 第10歩 「真似る」を楽しむ。
「真似をする」について私が真っ先に思うのは、数年前に亡くなった伯母のこと。私にとって彼女は真似したい対象だった。20代のときにアメリカ人と恋に落ちて結婚し、日本を離れ、アメリカで長年暮らした伯母。いつも凛とした姿勢の人だった。年をとっても、少し派手なアクセサリーで、シンプルな装いを引き立てる-、そんなお洒落を楽しんでいた。カジュアルな服を粋に着こなす彼女を、私は密かにお手本にしたものだ。 10年以上前のことだ。久しぶりに帰国した伯母が、きれいな指輪をしていた。一文字のゴールドのリングに、小さな宝石が4つ並んでいる。「これはね、マザーズリングっていうの。『お母さんの指輪』よ」と伯母が言った。「子どもたちからのプレゼントなの。4つの宝石は家族の誕生石。アメリカでは、子どもたちからお母さんにマザーズリングを贈ることがあるのよ」。それは今まで見たどんな指輪よりも魅力的に見え、私はたちまちその指輪のとりこに。いいなあ、私も欲しいなあと思って、傍らにいた私の子どもに目をやる。しかしその時、彼らはまだ幼児。まさかねだるわけにもいかない。では20年以上も待つ?仮に待ったとしても、将来子どもがくれる保証はない。マザーズリングのコンセプトからは完全に外れるだろうが、私は貯金をはたいて自分でオーダーすることにした。 伯母のものを真似たデザインを宝石店に伝えると、予算の関係で石は驚くほど小さくなりそうだったが、それでも構わなかった。待ちに待って、とうとうリングが完成。ところがどうしたことか、幅もサイズも違う。お店の人はあわてて早急に作り直すと言ってくれたので、さらに待つ。そうして、ようやく出来上がった念願のリング。すっかり気に入って「いっそのこと、マザーズリングショップでも開こうかな」と思うほどだった。 数日後、何の気なしに指輪を作った店に立ち寄った。するとそこに気になる張り紙が。「幸運を呼ぶ指輪!4つの石のパワーがあなたの未来を導く」。もしやこれは……。張り紙の下のガラスケースにあるのは、店の人が作り間違えたあの指輪だ。ケースの中に鎮座して、何とも言えぬ有難さをかもし出しているではないか。しかし4つの石というが、もともとあれは私たちの誕生石。宝石の意味を客に聞かれたらどうするのだろう。「神秘のパワーを秘めた4人がいましてね……」そうはなるまいが、想像だけして楽しんだ。海を越えて真似られた伯母のマザーズリング。ひとつは形を変えて、今も誰かの指で幸運を呼んでいることだろう。 |