| 第7歩 「見直す」を楽しむ。
ラブレターに挑戦する前には、彼は日本語でのけんかを試みたこともあった。彼が、相手の日本人に爆笑されたと憤慨しているので、よくよく聞くと「この野郎!」であるべきところに決定的な誤りが。彼はどうも「その野郎!」と叫んだらしい。そこは「その」ではなく「この」ですが。と説明すると「ナルホド!」と感動し「かっこいいなあ」と言う。何がどうかっこいいのかは、よくわからないが。 アレンは「いいなあ、日本人は。こんなスゴイ言葉を自由に使えて。ボクなんか『君へ』と『君に』をどう区別するの?とか、いつも考える」と助詞の煩雑さについて愚痴る。アレンによると、けんかの言葉にしても敬語にしても、表現が多様であることがスゴイのだそうだ。彼の話を聞いていると、当たり前に日々使っている言葉が新鮮なものに感じられるのが不思議だ。改めて一つひとつの日本語の意味を確認していく作業も楽しい。「当たり前」を見直すことにすっかり夢中になってしまった。 ラブレターを直しながら、今のアレンの気持ちを表すのなら文法のミスがあってもいいんじゃないかなと思い「完璧に直さないほうが、『君へ』捧げる愛なのか『君に』なのか?なんて悩みながら一生懸命書いてることが伝わるかも。同じ内容の英文をつけて送ったら?」とアドバイスした。 後日、アレンからメールが来た。「タカコ、聞いて!日本人のガールフレンドができたよ!」とある。良かった!しかし何度見直しても、彼女の名前がラブレターの相手の名前と違う。どうも別人らしい。では、あの情熱は?私の苦労は?と思いつつ、おめでとうの返信メールを送った。「PS.彼女の名前は、日本語のミスですか」と添えて。 |