三重県の地域情報応援サイト RAKU/コラム001
第4歩

「開ける」を楽しむ。


  私は通販好きだ。今も、注文したコーヒーの到着を待っている。ものを手にとって確かめもせずによく買えるなあという向きもあろうが、通販には通販なりの楽しみがあるのだ。それは「箱を開けること」。実物を見ていないからこそ持てる期待だ。子供の頃、遠方に住む祖母が、年に1、2回ダンボール一杯につまったお菓子を送ってくれた。どこでも買えるお菓子なのだが、一時にどさっと贈られるという迫力。子供にはたまらない。その時のダンボールを開けるワクワク感が未だに忘れられないのかもしれない。
  ある時、郵便局の人に「代金着払いのお届けもの」と、ダンボールを手渡された。記憶をたどっても着払いの品を頼んだ覚えはない。不審に思って差出人を見たが、名前がない。あるのは電話番号だけ。しかも携帯のナンバーだ。怪しい。「この荷物に心あたりはないんですが」と告げると、郵便局の人は、受け取り拒否が出来るという。新手の詐欺だろうか。それにしても中身は何だろう。開けたい。だが、開けるということは受け取るということだ。そこでちょっと振ってみたりする。彼が困った顔をしたので、真剣に「こんな不審な荷物が届くことって、よくあるんですか」と尋ねた。彼いわく「いえ、そんなことはありません。それに受け取らなければいいんですから」。なんてのん気なんだろう。もっと切迫してほしくなって「開けたら爆発なんてことは?」と言ってみる。「それはないでしょう」。あくまでも彼は冷静だ。私はとても開けたかったのだけれど、ここは常識的になろうと判断し、荷物の受け取り拒否をした。一方、どこかで渦巻く陰謀を阻止する使命感にかられ、彼が立ち去る前にすばやく携帯番号を暗記した。
  事件だ、と本気で思った。とりあえず忘れないうちに、例の携帯番号を書きとめておこう。しかし、何かひっかかる。さっきの字。特徴のある数字の9。あれは、ひょっとして登録したまま暗記していない息子の電話番号ではないか?その時、息子は修学旅行中だった。急いでメールを送る。「もしかして、荷物を着払いで送った?」「うん。すごくおいしいものだよ」私が大慌てで郵便局に電話をしたのは言うまでもない。息子に文句を言って、ようやく荷物を取り戻した。そしていつものように「開ける」楽しみを満喫する。中には長崎カステラが入っていた。一番美味しそうだったという彼の言葉のとおり、大騒動のカステラは、格別おいしいものだった。
  この一件で、通販マニアの私は「中身」が謎であるほど開けたいと思い「開ける」楽しみも倍増すると悟ったのであった。…というわけで、この度の注文に至る。今回は「中身おまかせ」という謎のコーヒーセット。開ける瞬間が、本当に待ち遠しい。