日本人に馴染み深く、栄養価の高い高級魚として人気の高いウナギ。現在は天然のものは少なくなり、養鰻が盛んに行われ、中国など国外からも輸入されている。養殖ウナギはウナギの稚魚「シラスウナギ」から育てられるが、近年はその漁獲量も減り、養鰻業者にとっては深刻な問題となっている。国内では1960年代からウナギの人工ふ化に取り組んでおり、昨年、度会郡南勢町の水産総合研究センター「養殖研究所」南勢庁舎でウナギの卵からシラスウナギまでの飼育に世界で初めて成功。現在その成長記録を更新している。
南勢町中津浜浦にある同研究所南勢庁舎は国の独立行政法人機関で、主に海産魚介類の養殖に関する研究と管理を行う施設。研究所前の五ヶ所湾から海水を引き込み、タイやヒラメなど養殖魚を飼育しながら養殖に適したエサの研究、魚の病気や遺伝子、養殖漁場の水質研究などを行っている。
同研究所ではウナギの人工ふ化の研究に1992年から本格的に取り組み始めた。6年後の98年にはサメの卵を粉末にしたものが、ふ化後のエサに適していることを突き止め、全長10mmまで成長させることに成功。翌99年には、ふ化後250日以上飼育し、大きいものは全長30mm前後まで成長させた。
ここまでは比較的順調に研究を進めてきた同研究所だったが、透明な柳の葉のような幼生期の仔魚から養鰻に使用されるシラスウナギへの変態までは困難を極めた。
そこで同研究所は民間企業と改めてエサの改良に着手。飼育装置と飼育方法も見直し、昨年、念願のシラスウナギに変態させることに世界で初めて成功した。
「ウナギの人工ふ化にこれだけ時間がかかったのは、ウナギの生態がまだ完全に解明されていないことも原因の一つです」と話す同研究所・生産技術部の田中秀樹繁殖研究グループ長(46)。日本の河川で見られるウナギは、太平洋のマリアナ海溝付近でふ化し、黒潮の潮流に乗ってやって来る。しかし、未だ海でのウナギの産卵の様子や卵も発見されていない。
現在、同研究所の人工ふ化ウナギは体長約40cmに成長しているが、ここまで成長するウナギはまだ数千匹のうちの数匹。成長のスピードも遅く、コストもかかることから実用化のメドは立っていない。養殖場で育てられるウナギは大半が雄で、人工ふ化用の卵も少ないのが現状だ。
「今後、研究が進み、安価で増養殖できるようになれば、実用化の道も開けるでしょう。また、この人工ふ化の研究は、減少傾向にある天然のシラスウナギの保護と、ウナギの生態の完全解明にもつながります」と田中さんは話している。
同研究所は一般公開も行っている。次回は来年夏の予定。問い合わせは同研究所企画連絡室情報係=電話0599(66)1830=まで。ホームページはhttp://www.nria.affrc.go.jp
|