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観音さんの門前町また藤堂藩の城下町として発展し、太平洋戦争の空襲の戦火を経て復興した歴史ある街、津市大門。往時の残り香を求め商店街をカメラ携え訪ね歩いた。
歴史を映す観音さんの町
「伊勢は津でもつ、津は伊勢でもつ」の唄にもあるように、津市の大門は津観音の門前町、藤堂藩の城下町として県下でも一番の繁華街として栄えてきたエリア。観音寺から南に延びる大門大通り商店街、同商店街から西に国道23号線まで延びる立町商店街が大門のメーンストリート。
その商店街の核となる津観音は奈良時代初頭に開山した「恵日山観音寺」といい、日本三観音の一つといわれる真言宗の古刹。本尊は聖観世音菩薩で、津はじめ全国の信者が参詣に訪れ、大変にぎわったという。江戸時代には歴代将軍家、津藩主藤堂家の祈願所として加護を受け、寺内町を形成するほどであった。仁王門を潜ると正面に本堂、左には500余年ぶりに再建されたばかりの五重塔が堂々と建つ。節分会、4月の会式、8月の十日観音には大勢の人でにぎわうのは今も昔も変わらず。
明治以後の大門は観音寺境内やその周辺に劇場が建ち並び、祭り行事と合わせ、庶民の娯楽文化の中心地的役割がますます強くなっていったが、太平洋戦争末期に津市に空襲があり、市街地は一面の焦土と化し大門も跡形もなくなった。戦後は、戦前から進められていた土地区画整理や都市改造事業が進み、大門も映画館が復活、戦後の商店街の歴史がはじまった。昭和43年には観音堂がようやく再建。にぎわいも増していった。
ところで大正時代のレジスターを現在も使用していると聞き、伺ったのが創業80年、和洋菓子の「サンカドー」。生ケーキやゼリーが並ぶケース越しに渋い光沢を放つ木製レジスターが見える。「創業時のものです。昔のは丈夫ですね」と店主の阿部真三さん。夏はさっぱり味、秋口には少し濃い味にアレンジする人気のソフトクリームを食べながら、昔の商店街のことを尋ねてみた。
「今の大門駐車場の所には昔、曙座という劇場があり、親に連れられて歌舞伎鑑賞した思い出や美空ひばりの公演の時に商店街に長蛇の列ができたのもよく覚えていますよ」と懐かしさを交え楽しそうに話してくれた。行政区画の変更で旧町名が消滅したことを非常に残念がっていたのが印象に残った。
【写真キャプション】
上: 津観音。本堂(右)は昭和43年、五重塔は平成13年に再建された
中:大門大通り商店街。毎月第1日曜日はフリーマーケットが行われる
下:サンカドー。店の前には参宮街道の道標が残る
戦争の思い出語る建物
昭和20年7月の津市の空襲は、周辺に軍需工場が多かったため空爆は激しいものになり、市街地の73%が焼失したという。大門の町も観音寺の伽藍とともにすべてが焼け野原になった。
現在、商店街の一角に、1階がパチンコ店になっている古い4階建ての建物がある。戦災を生き延びたこのビルは、昭和 年に三重県初のデパートとして誕生した旧大門百貨店である。当時の地元有力者たちが津市の協力を得て興した、同市唯一の百貨店は市民にも好評で順調に推移していたが、復興後は軌道に乗せるのに労を要したという。そして昭和30年に県外で百貨店を事業展開していた松菱が、同店を引き継ぎ「津松菱」として再出発。わずか1年で赤字を償還する。その後、増床のため昭和38年に現在地の東丸之内に移転。旧百貨店を引き継ぎ、津市民に愛されてきた津松菱は2年後には創業50周年を迎える。
大門商店街にある8代続く「村田金物店」は空襲で家屋を焼かれ、その跡に急場しのぎで店舗を建て直した。店主の村田和子さんがいうには「当時のバラック」だそうだ。謙遜とはいえ、築55年以上の今も健在。間口4間の年季の入った店構えを見ていると、そこだけ時間が遡って行くようだ。洗たく板、軒下などに提げて使う手洗器、ねずみ捕りなどが店先で違和感なく売られているのには感心した。
【写真キャプション】
村田金物店の店内や店先には、商品がいっぱい
チャレンジする商店街
低経済成長時代の今、人々の価値観や生活様式も変化、各地の商店街が努力する日々が続く中、平成12年5月に大門商店街のオーデンビル1階に「チャレンジショップ」がオープン。独立開業を目指す人に店舗スペースを提供、経営者としての基本的ノウハウを実践で学んでもらい、その後、商店街の空き店舗などを活用してもらおうという試みだ。現在は日本初のプロレスマスク博物館、びっしりと般若心経が書き込まれたひょうたんが並ぶ工房など6店舗が個性を出したショップを展開中。
同ビルも戦災で残ったもののひとつで当時は銀行だった。「当初は取り壊して住宅を立てるつもりでしたが、店舗をなくすのは商店街にとってはよくないと考え直しまして」とチャレンジショップの家主であり世話人の横田正さん。同ビルは日米親善英会話教室をはじめ各種教室も開講。文化の拠点的役割も果たしている。
深夜客を取り込もうと頑張っているのが昭和5年創業の「大森屋本店」。うどん・そば・中華そばの専門店であった店も時代に合わせてメニューを増やし、丼物はもちろん、定食やセットメニューもある。営業は午後7時半で終わるが、10〜12時の2時間は赤のれんに赤ちょうちんを出し、ラーメン類のみの営業を店主の田中健夫さん一人でやっている。「昔ほどではないですが大門といえばスナック、バーなど夜の店が集まる場所。一杯やった後のラーメンを提供しています」と田中さん。
なるほどと、うなずきながら創業時からのメニューの中華そばをいただいて、大門を後にした。
【写真キャプション】
上:チャレンジショップが入るオーデンビルはその昔、銀行だった
下:大森屋本店。古きよき大衆食堂の様式美がそこにはある
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