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古くからフグが水揚されているにもかかわらず、大消費地の下関などに出荷されていた志摩郡阿児町安乗のフグを、地元の旅館などで提供することにより、「あのりふぐ」としてブランド化する取り組みが数年前から始まり、県内や名古屋、大阪方面からフグ料理を目的に訪れる観光客が急増している。同町観光協会では春に行っていた観光キャンペーンをフグシーズンの秋冬に切り替え、旅館でフグ料理を安く提供したところ、フグ料理を注文した宿泊客が昨年は前年より80%も増加した。今年も10月からフグ漁が始まり、さらなる飛躍が期待されている。
安乗地区のトラフグ漁は戦前から数人の漁業者によって細々と行われていたが、昭和59年にトラフグが大発生し転機を迎えた。「この恵みを有効に利用しよう」と漁業者が話し合い、乱獲を防ぐために漁期を10月から2月までと定め、漁法を底延縄(そこはえなわ)漁だけとし、700t以下の小型魚は再放流するなどの取り決めを行い、昭和61年からは種苗放流も行ってきた。
数年のサイクルで大漁、不漁を繰り返しているものの、西日本のフグ漁に比べ漁獲が安定しており、昨年は安乗漁港だけで75トンの水揚げがあり、全国一の漁場に成長した。
一方、フグ料理を出すところがほとんどなかった地元の旅館も、「最高級のトラフグが地元で捕れるのだから、これを有効活用しよう」と、旅館組合で勉強会を開くなどしてフグの調理免許を取得、安乗岬旅館組合員27軒の内、21軒がフグ料理を提供できるようになっている。
さらに、今年8月には漁協や商工観光関係団体が集まって「あのりふぐ協議会」を設立。「あのりふぐ」の規定を「志摩の国漁協に水揚げされる、遠州灘から伊勢湾、熊野灘で漁獲された体重700t以上の天然トラフグ」と定め、商標登録した。
観光協会のキャンペーンでも、10月1日から3月31日まで、フグ料理が食べられる1泊2食付きの宿泊で1万5000円、食事のみは1人1万円の割安グルメプランを用意、PRに努めている。ふぐ料理の内容は、てっさ、てっちり、唐揚げ、てっぴ(酢の物)、ぞうすいなど。これに他の鮮魚のお造りや漬け物、果物などが付く。
安乗シーサイドホテル代表で安乗岬旅館組合長の迫間正さん(64)は「おかげで、あのりふぐの料理を注文されるお客さんが目に見えて多くなってきました。少しでも多くの人に美味しい『あのりふぐ』を召し上がっていただけるよう、これからも安価でフグ料理を提供していきたい」と語っている。
また、あのりふぐ漁業者であのりふぐ協議会長の浅井利一さん(58)は、「川から養分を含んだ水が流れ込み、プランクトンが発生してフグのエサになるイワシやアジが育つという生態系ができている。これも漁業者の資源管理の地道な努力があったからこそ。昨年は地元消費が5%ほどあった。今年はさらに増えて20%ぐらいいくのでは」と期待している。
問い合わせは阿児町観光協会=電話0599(43)3975=まで。
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